Upasthana

18歳で富士山を0合目から山頂まで登ったときから、私は富士山の虜になりました。毎年富士山に登ることをとても楽しみにしていました。しかし21歳の春、足にがんが見つかります。足の手術をすることは、もう富士山に登れなくなることを意味していました。

それでも必死にがんの治療とリハビリをし、数年後に富士山に向かいました。「これを最後にしよう」そう決めて、一歩一歩愛おしむように富士山頂を目指しました。思うように動かせない足は、私にとってまさに障害でした。この足のせいでできないことがこれからもある、そう思っていました。

でもそれは間違っていました。富士山頂から見た景色はそんないじけた考えを吹き飛ばしてくれました。この足のおかげで富士山に登れた、そう思えたとき、私は初めて足に感謝することができたのです。

今、私は富士山フォトグラファーになりました。病気になって失ったものもあるけれど、好きなものは変わらず私のそばにあり、諦めない気持ちを教え続けてくれています。

今、病気と闘っている方々、不安に苛まれている方々、 毎日を一生懸命に生きている方々。世の中に暗い影が落ち、明日の自分を見失いそうになる時もあるかもしれません。困難な状況をがんばる方たちに、私を支えてくれている富士山の力を感じてもらいたい。そんな想いを胸に今日も富士山を撮っています。